
以下、プレスリリースより。
■国内最高峰のコンピューターグラフィックの学会『VC+VCC 2021』にてVC論文賞を受賞!

今回受賞した学会は、CGに関する技術の国内最高レベルの発表および情報交換の場として1993年から開催され、本年で29回目を迎えます。29回目となる今回より、産学の交流の機会をより一層創出することを目的に、VC(Visual Computing)を後援するイベントとして VCC(VC communications)を併催しています。
世界的にもハイレベルなCG技術の研究開発から、現場への技術還元まで、幅広く議論する場であるVCをVCCがサポートし、より活発な交流の場を提供しています。
■受賞内容
■アワード名 |
VC論文賞 |
■論文タイトル |
『視点依存で模様が変化する3Dプリント可能な構造の設計法』 |
■受賞者 |
櫻井快勢(かいせい)(株式会社ドワンゴ) 宮田一乘(北陸先端科学技術大学院大学) |
■概要 |
複数の視点と色を与えられたとき、それらを表示するような、視点依存で模様が変化する構造を提案する。 構造は、与えられた視点を分断するような遮蔽の壁を有し、それぞれの壁面に、指定の色に見えるようなテクスチャが与えられる。また、この構造は指定の形状に付与することができ、形状の表面を覆うように施すことで、視点依存で模様が変化するような立体造形が可能となる。 実証のために、不透明なフルカラーの部材による3Dプリンティングで、その構造を作成し、この手法が有効であることを確認した。さらに、造形物の設置環境が既知であるとき、背景と模様をあわせることで、疑似的に透明を表現できた。 |
■受賞者からのコメント |
CGにおいて国内最高峰の学会で、私の研究発表が論文賞に選ばれたことを誇りに思うと同時に、この発表を許可し、当該プロジェクトを応援してくださった社内の皆様方に感謝の気持ちでいっぱいです。 本学会に採択された研究は、国際的に活躍される研究者が取り組んだものばかりで、その中で受賞できたのは、幸運だったとしか言えません。 今後もたまには良いこともあるだろうと希望を持って、研究開発に邁進してまいります。 |
■見る方向によって異なる物語が表示される本や、風景になじんだ建築物など産業展開へ
今回受賞した「技視点依存で模様が変化する3Dプリント可能な構造の設計法」は、ドワンゴが2016年よりCG研究を応用した特殊印刷技術「DMAG(ディーマグ)」の一環として開発を進めているものです。
色と形状の最適化により作成したデータをもとに、3Dプリンタで印刷した造形物は、見る方向によって異なる絵や模様が見える特性を持ちます。
これまで、見る方向で絵柄を変える仕組みは、
・お札やクレジットカードに虹色で印刷されているホログラム
・広告のアテンションに使われるレンズを用いたレンチキュラー
・プロジェクタやデジタルディスプレイによって映し出された映像
など、さまざまな形で存在していました。「DMAG」では、それらの持つ課題を解消し、色の再現性が高く、紙だけでなく立体物や布なども印刷の対象にします。
印刷するので電源機器が不要などより使い勝手の良い技術として開発しています。
産業展開としては、例えば、見る方向によって書いてある内容が変わるお菓子や飲料のパッケージ、見る方向によって異なる物語が表示される本など同じ面積で多面的な要素を付け加えることができます。
また、コロナ禍でファッション性が増したマスクに対し、見る方向で柄が変わるデザインといった新たなバリエーションを加えることができるなど、今まであるものに付加価値を付けてくれる技術です。印刷の材質を選ばないため、これまで以上に幅広い用途が期待されます。

今回の論文でも重要な要素である「造形物の設置環境が既知であるとき、背景と模様をあわせることで、疑似的に透明を表現できた。」という点に関して、具体例を実証した様子と共に紹介します。 見る方向によって見えるものが変わる技術は、そのデザイン性の面白さのみならず、造形物が置かれる環境が決まっている場合、パノラマ写真から背景と同化するデザインを生成しプリントすることが可能です。 実用化に向けては、風景になじんで景観を損ねることなく建築物を設置したいという要望や、逆に、設置場所で最も目立つデザインを導き出し看板へ応用するなどが考えられます。
ドワンゴでは、ネットの双方向性を最大限に動画や生放送に取り込んだ「ニコニコ」や、「ネットとリアルの融合」をテーマにした巨大イベント「ニコニコ超会議」などのエンターテインメント分野のみならず、今後ともデジタル技術を応用した新たな技術開発にも注力していきます。
